エコガイドの価格設定考察〜屋久島YNAC松本毅さんのネット講演を聞いて〜観光ガイド論4

Pocket

今日から再び、和歌山大学観光学部夏期集中講座のフィードバックに戻ります。

今回、ネット講義だけでも5回あったんです。それだけでも5回ブログが書けてしまうという(笑)。それ以外に現場で講演した人が3組。3名じゃなく3組なのは1組が我々夫婦f^^;プラス藻谷浩介さんという充実した講座でした。

今日はネット講演の4人目、屋久島のYNAC松本毅さんのお話をします。


YNACの松本さん

おはようございます!普段は民宿&ダイビングショップの親父、コムサポートオフィスのアドバイザーもやっているガク(@kasumi_kadoya)です。

YNACの松本さんは日本におけるエコツアーガイドの草分け的な方。元々は屋久島でダイビングショップをオープンし、登山ガイド、元環境省レンジャーの方と一緒に海と山のどちらもをガイドできるエコツアーのショップを1993年に設立されました。


松本さんの経歴

屋久島が世界自然遺産になる前、まだ日本において「ガイドでお金を取る」という考え方が浸透していなかった頃からされている大先輩です。

私が屋久島を訪れたのは20歳になったばかりの頃。なので、ちょうど30年前です。当時は屋久島だけに行く、というのではなく屋久島と種子島がセットになっていました。私自身も2島どちらにも行きました。

今の屋久島は世界遺産になり、かつ自然体験ツアーが豊富にあるので、屋久島単体でいらっしゃるお客様も増えているとか。島にいるガイドも公認ガイドだけで160人以上になっているそうです。

そんな松本さんのお話で非常に面白かったのが価格設定のお話です。

ダイビングガイドと登山ガイドの価格設定の違い

今も昔もそうなのですが、ダイビングガイドはゲスト一人いくら、という料金設定になっています。例えば、2ビーチファンダイビングお一人様1万円としたら、3名を一緒にガイドすると3万円、4人だと4万円になります。

が、当時の山岳ガイドはガイド一人がいくら、という料金設定だったとか。例えば、1人でガイドしてもらったら2万円、2人でガイドだとゲストで割り勘して一人1万円、4人だとゲスト一人あたり5千円となるわけです。
(※近年は山岳ガイドもそういった単純な割り勘方式ではなくなっています)

登山も含め、全てのエコツアーをダイビングと同様ゲスト一人料金に変更した時に、登山ガイドでYNACはぼったくりをしている、という評判になってしまったそうです。

が、事業として開催する場合、ガイドの日当制では会社を永続していくことができません。

何人やってもガイドの日当分のお金しか入ってこないわけです。例えば、1万円で20日ガイドしたとすると、ガイド日当制の場合の月売上は1万円×20日=20万円です。ゲスト人数制で1日に2−4名平均3名を20日間ガイドした場合の売上は1万円×3名×20日=60万円です。

ガイドの日当以外にかかる会社の維持運営費(事務所経費、ガイドの社会保険料、…)などの捻出を考えた場合、後者(ゲスト人数制)でないとビジネスとして成り立たないわけです。

基本、屋久島のエコツアー、全国のエコツアーがこの『一人いくらの料金設定』をとっています。

この価格設定を貫いたところに、その後のエコツアーの未来、ガイドが食べていけるビジネスモデルが確立できたんじゃないかなぁと思います。

実際、観光ガイドでも旅行会社等だと1バスガイド一人いくら、なんて交渉される場合があります。これ、お客様一人いくら、とするか1バスいくらとするかで、ボランティアガイド価格かプロガイドとしての報酬価格かの差がはっきり出てきます。

高くでとる、というのはガイドの地位を高めたことにもなったと思います。

元々、入れ込み数を追っかけて薄利多売を進めると環境に対してもよくありません。


質の高いエコツアーでガイドの経済的自立を

今後の課題〜ネット集客のこれから

宿業界にも詳しい私だからこそのちょっとした意地悪な質問をしました。

屋久島はガイドも多くいて、エコツアーが確立している日本の中でも「お金のとれるガイド」の先行地でもあります。でも、そうなると当然ながら競争が起こり、価格のダンピング合戦も生じます。会社として運営している人と、個人でガイドを受けている人。当然ながら会社としてやっている人の方がコストがかかります。

とは言っても、屋久島の中では現在自分たちの価値を下げてしまうような過度な価格競争は起きていないそうです。


ガイドの能力を高める活動(認定制度)を
行っている

それよりも新たな問題となっているのがネットエージェントの登場です。アソビューという体験型予約サイト、更にはじゃらんnetやAirbnbでも遊び・体験予約をはじめてきたのです。


遊び・体験予約サイト「アソビュー」

こちらからの予約は当然ながら手数料が取られます。いわゆるポータルサイト型の中間マージン搾取型ビジネスが登場してしまったのです。

これ、宿業界も通ってきた道です。

宿業界の場合、旅行会社の高い手数料に悩んでいた時に低手数料のネット予約サイトが登場し、歓迎された背景があります。が、これで大打撃を受けたのが各地方の観光協会。元々多くの観光協会は自分の地域を訪れるお客様の宿泊斡旋窓口として機能していたのです。この手数料を運営費の一部に当てていた観光協会にとっては、手数料が予約サイトに流れてしまい、観光協会が自力予算で運営できないケースが出てきてしまっているのです。

更には、旅行会社の凋落によって予約サイトの手数料がどんどん以前の旅行会社の高い手数料に近づき出してきたのです。

エコガイドの事業者の人たちは、これまで例えば「屋久島 ガイド」とか「屋久島 ダイビング」といった検索をすれば自分たちのお店が検索のトップに来ていたのに、リスティング広告で上位表示をさせたりすることで、アソビューなどのネットエージェントが上位に表示されてしまうようになってしまいました。


「屋久島 ダイビング」で検索すると
トップがアソビューに

もちろん、予約システムを提供してもらっている、あるいは広告代だと思えば、一概にネットエージェントが悪、というわけではありません。ただ、ガイドとしてビジネスが成り立てば、多くの参入者が出てきて競争が起こり、更にはこういった紹介サイトが登場してこれまでと同じように売上を確保するのが難しくなるのです。

良くも悪くも先進地、先行地のお話が聞けたことはとても良かったです。

ガイドの価格設定の考え方。シビアな話ですが、こうやってしっかり議論していく場が必要です。趣味の延長ではなく、ガイドで飯を食っていく”覚悟”のある人たちの最前線のお話です。

コムサポートオフィス代表
今井ひろこのブログはこちら
お問い合わせもこちらから

↓↓↓
今井ひろこドットコム
今井ひろこドットコム

The following two tabs change content below.
普段は民宿の親父、時々ダイビングインストラクターです。昭和42年生まれのアラフィフ。8年間のサラリーマン生活の後、実家の民宿を継ぐ。一時は1億あった借金を8室の小さな民宿で返済。田舎の小さな事業者は、お金をかけなくてもお客様に喜んでいただいてなおかつしっかりと利益のとれる商いをしないといけません。そのために役立つ情報を日々発信していきます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする